「そしたらいよいよグリース編、まずは構造から説明するわ」

「構造、って言うと、なんだかリールみたいな気がするっ・・・」

「だからそのあたりの説明な」

「・・・」

「グリースの組成を言うと、基油がおよそ80%、それに残りが増ちょう剤やら添加剤になる」

「基油や添加剤は前に紹介したのでいいんだねっ」

「そのとおり、もう一回表を提示するけど・・・

基油その1

基油その2
便利やから何回でも登場させるぞ
うん、いいよっ

ただ、潤滑油とグリースの違いってのを考えてほしい」

「それって?」

「だから、考えろって」

「・・・」

「無理か?」

「・・・」

「その、なんや・・・、潤滑対象といえばいいんかな?」

「・・・オイルはベアリングだけど、グリスはそうじゃない、ってコトっ?」

「うん、潤滑油は高速回転するベイトリールのスプールベアリングが主用途で考えてるけど、グリースはそうじゃなくって、ギヤやらスライド部分やらいろんなところで使う、動作的にはスプールベアリングに比べて遙かに低速ってことやな」

「じゃぁ、基油編で紹介した特性とは別で考える、みたいなっ?」

「潤滑油の場合その対象はボールベアリングでこれはマルテンサイト系ステンレス鋼やけど、グリースはベアリング以外にもいろいろな部品の潤滑に使う」

「さっき言った、歯車とか、ボタンとか、そんなのだねっ」

「材質としてはステンレスに銅合金、亜鉛ダイカストにアルミ合金、樹脂やらゴムのOリングまで多種多様、そしてその負荷速度は低速であること、この条件であればエステル油ベースなのはともかくとしてシリコーングリースは考慮対象に入ってくる」

「シリコングリスは鉄と鉄はダメだけど、それ以外はいい、ってコトだったよねっ」

「そう、鋼対鋼の潤滑能力を改善したシリコーングリースも存在するよ」

「じゃぁ、樹脂のコトを考えると、それが一番いいんじゃないっ?」

「ベストチョイスか?と言われると何とも言えんけど、ベターな選択として対鋼潤滑能力を向上したシリコーングリースはミキの言うとおりで候補になるなぁ」

「それって簡単に手に入るのかなっ?」

「そんなに特殊なグリースじゃないから入手性は悪くない、・・・これ以上はあとでコメントさせてもらっていい?」

「そうだねっ、じゃぁ、残りの増ちょう剤だけど・・・」

「グリースって通常は見ての通りでマヨネーズみたいに液体でも固体でもない、・・・半固体状態を保ってるやんね」

「うんっ」

「その80%ほどの基油が半固体を保持するのに必要な組成がこの増ちょう剤な、そしたら例によってこれを見てもらおう・・・」

増ちょう剤
これも例によって共同油脂のパクリやね
いつもそうなんだねっ

「ベースオイルや添加剤もそうだけど、増ちょう剤もいろんな種類があるっ・・・、でねっ、増ちょう剤って石けんなのっ?」

「らしいな」

「石けんって手を洗う、あの石けんだよねっ」

「ほかにどんな石けんがあるねん?」

「それを言われてもっ・・・」

「金属石けんやな」

「石けんが金属って、全然わかんないよっ・・・」

「そらわからんわ、ウチも知らんし」

「あ〜っ、無責任だよ〜っ」

「それも繊維状やからなぁ、ますますワケわからんと思うぞ」

「Gamくん、そのあたりって調べてないのっ?」

「そしたら『脂肪酸の金属塩』って理解できる?」

「ううんっ・・・」

「最初にコメントした『高分子のワケのわからん話し』になるからウチは知らん、そしたら話し戻して、その金属石けん由来の増ちょう剤とそうじゃない増ちょう剤があって、割と見かけるのをピックアップすると・・・

メーカーさんにもよると思うけど、その細かい分類までやってないケースが多い」

「この表を見ると、リチウム石けんが万能型、ってなってるよねっ、そうすると、リチウム石けんが一番多いのかなっ?」

「そんな感じ、リチウム石けんに当たり障りのない鉱物油を組み合わせて『万能グリース』ってことでホムセンでも安く売ってるよ」

「それはリールにはどんな感じなのっ?」

「ヒトによっては硬いと感じるかも知れんなぁ、グリースがしっかり仕事してる感じが好きなヒトもいるし、それが嫌いでギヤにグリースじゃなくって潤滑油を使うヒトもおるし」

「歯車にオイルを使ってるんだっ」

「らしいな」

「それってハウジングの合わせ目から漏れてこないかなっ」

「漏れてくるのはグリースでもモノによっては漏れてくるよ」

「・・・」

「そしたら次に見てもらいたいのが・・・

繊維
これも協同油脂のパクり・・・
そればっか言ってるっ

それぞれの増ちょう剤を電子顕微鏡で見たらこんな感じ」

「一番右下のPTFE以外はさっき言ってた繊維状、なんだねっ」

「PTFEは平たく言えばテフロンやけど、テフロン以外は繊維状になってて、あと、この画像は電子顕微鏡撮影画像やから平面やけど実際には立体になってるからこの繊維が複雑に絡みあってるわ」

「・・・」

「この繊維が絡みあってるのがミソで、絡みあうことにより潤滑油が保持されてあの半固体状態を保ってる」

「ふ〜んっ」

「保持してる、といっても繊維の絡みあいやからフタしてるワケじゃないから潤滑油は自然に滲み出てくるよね」

「うんっ、そんな感じだねっ」

「そうすると滲み出てきた潤滑油が潤滑したい部分に付着することになる」

「じゃぁ、グリスってオイルをため込んでて、少しずつだけど自然にオイルを必要な部分に塗ってる、みたいなっ・・・」

「結局、グリースの役割は潤滑油の供給源やね」

「なるほどね〜っ」

「そういう考えでいくと、グリースの潤滑能力は基本的には基油に依存することになる」

「増ちょう剤は関係ないっ?」

「ギヤに塗布したグリースって噛み合いの力ではみ出すから、こんな感じで潤滑面・・・、これやと歯面にはごくわずかな量しか残らない」

劣化メタロイヤル
劣化メタロイヤルのふっ素グリースKな

元々少ししか塗布してないよねっ・・・

「そんな感じっ・・・」

「それでもグリースによる潤滑が成立するのは、はみ出たグリース、・・・この画像で言えば歯面じゃなくって歯先や歯底のグリースが潤滑油の供給源になってる」

「・・・」

「そしてその供給量は増ちょう剤の種類と潤滑油の動粘度に依存する」

「繊維の絡みあいが単純だとしみ出るオイルは多いし、動粘度が低いと、これもしみ出る量は多くなる、でいいんだねっ」

「ただ、モノによっては直接潤滑面に入り込む特性を持たせたグリースも存在するわ」

「そんなのもあるんだっ」

「だから潤滑って難しい、一筋縄ではいかんのやね、そしたら次はこれ・・・

グリースの種類
これはどこからパクったか忘れた!
放置ばっかりしてるからだよっ

それぞれの基油と増ちょう剤を組み合わせたのがグリースの製品になるけど、その特性表とでも言えばいいのかな」

「リールに使うとすると、水回りだからナトリウムのグリスはダメだよねっ」

「ナトリウム以外やったらどれでもいい?」

「リールは低速だから、その中でいいのを選ぶっ・・・、リチウム複合石けんと尿素化合物なんかがいいんじゃないっ、でねっ、その前の表には尿素化合物ってなかったよねっ」

「尿素化合物はウレアで、リチウム複合石けんはリチウムコンプレックスのことやね」

「じゃぁ、ウレアのグリスっていいグリスになるんだっ」

「その代わりウレアグリースは万能グリースよりも割高になるけど」

「この表で言うと、シリコングリスってリチウム石けんなんだねっ」

「リチウムグリースやらウレアグリースっていうのは増ちょう剤による区分でシリコーングリースは基油による区分、モリブデングリースは添加剤の二硫化モリブデンのことやね」

「Gamくん、この表の一番右のふっ素化合物はフッ素グリスのコトでいいのっ?」

「さっきの話しを考えるとフッ素グリースは基油も増ちょう剤もフッ素化合物やな・・・、で、増ちょう剤としてのテフロンは繊維状じゃなくって粒子やから潤滑油保持能力に欠ける面がある」

「・・・」

「そこにフリクションの低減を狙って基油動粘度の低いのを選択した場合はダダ漏れになるから、交換サイクルを多くとる必要があるわ」

「でもっ、フッ素グリスって結構なお値段だからっ・・・」

「リッチなヒトには向いてるよね」

「・・・」

「テフロンには増ちょう剤としての役目だけじゃなくって固体潤滑剤としての役目もあるから単純にはいかんのやけど、金銭面で考慮するとあんまりムリして使う必要はない、と言える、フッ素グリースの基本は特殊環境向けやから」

「じゃぁ、今は別のを考えてるんだっ?」

「それは次の機会、ってことで構造編はこれで終わり、次はグリースの流動性に関わる話しを考えてる」

「フリクションの低減、だねっ」

「あのな、ミキ、潤滑は一筋縄ではいかんのやからな」

「でもっ、一番一筋縄じゃないのって・・・、ホントはGamくんなんだよっ」

「なるほど・・・」

(2015年2月21日更新)

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