「えーっと、今度は『基油の巻』ってことで潤滑油の組成について触れてみるわ」

「そのっ、基油ってオイルの成分、でいいのっ?」

「ベースオイル、って言い方もあるわ、要するにその潤滑油がなにに由来するか、ってことやねんけど」

「ちょっと・・・」

「わからんか?」

「うんっ・・・」

「そしたらやなぁ・・・、例えば『ナタネ油』とか『ゴマ油』ってあるやん」

「うんっ」

「これってなにからできてると思う?」

「菜種とか、胡麻でしょっ・・・」

「そーゆーのんって植物の種を絞って油分を抽出してるやん」

「そうだねっ」

「それを基油で分類すると植物油になる、そーゆーことやねんけど、わかる?」

「あっ、そっか〜っ、・・・じゃぁ、それ以外にはどんなのがあるのかなっ?」

「そしたらようやく本題・・・

基油って大雑把に分けるとこんな具合やな」

「え〜っと、動物油と植物油はわかるけど、・・・鉱物油って?」

「原油を蒸留精製した成分に由来する、ちなみに工業用潤滑油の大半はこれやねんな」

「じゃぁ、鉱物油は石油ってコトでいいんだねっ」

「それでいい、巷の潤滑油は大半の鉱物油と、鉱物油では能力的に不足するような用途向けに化学合成油が使われてる」

「それじゃぁ、動物油とか植物油は潤滑油には使われてないっ・・・」

「もちろん技術が発達する前はそれらが主流なのは間違いないよね」

「結局、大昔のお話しなんだねっ」

「実のところ植物油については、生分解するから環境負荷が低い、ってことで見直されつつあるみたい」

「それってエコ、ってコトじゃんっ、リールオイルにはそう言うのって?」

「植物油は使ってないと思う、で、最後の化学合成油やねんけど、その組成にはいろんな種類があって、化学式やら分子構造やら言い出すと正直ウチも意味不明やねんな」

「Gamくんもそこまではわかんないっ?」

「『序の巻』で言うたやん、ウチ、高分子の知識なんかない、って・・・」

「・・・」

「これも大雑把に言うわ・・・

これ以外にはフェニルエーテル油やらポリグリコール油、シクロペンタン油とかあるみたいやけど、リール目的でそこまで考えんでいいと思うし、それ以前に手に入らんのと違うかなぁ・・・」

「基本はこの4種類、ってコトでいいんだねっ」

「そうやね、そしたらそれぞれの化学合成油についてコメントするわ、まず合成炭化水素油やけど、これの代表的なのがポリアルファオレフィンやねんね」

「『ぽりあるふぁおれふぃん』っ・・・」

「うん、組成的には鉱物油に近いけど、蒸留精製した鉱物油と違って不純物がないから鉱物油よりも化学的に安定してるねんね」

「じゃぁ、化学的に鉱物油を作った、みたいな感じでいいのっ?」

「そうやね、石油ってハイドロカーボン、炭化水素のことやんか、それを化学的に合成したのがポリアルファオレフィン、って解釈でいいと思う、で、特徴やねんけど、

こんな具合かな?まぁ、この辺はサクッと流してくれたらいいよ、鉱物油を強化した、って思えば・・・」

「流すっ?」

「ウチらはリール目的やからポリアルファオレフィンの特性については目くじらたてることはない、・・・次行くわ、次はエステル油、代表的なのがジエステルにポリオールエステル、それ以外にもコンプレックスエステルとかあるらしい」

「ぷぷぷっ、コンプレックスってなんか、おもしろそうな名前だねっ」

「劣等感の裏返し違うぞ、複合エステル、ってことやねんけどウチも詳しく知らん、そしたら特徴・・・

このエステル油は注目するところがあるねんけど、なんやと思う?」

「下の二つがダメなんだねっ、樹脂やゴムをダメにしちゃうのと、水を加えると分解しちゃうんだねっ」

「そうやね、エステル油って潤滑性がいいのがメリットやねんけど、ミキの言う通りで樹脂やゴムとの相性が悪いのが一つ、もう一つが加水分解で、この2点がNGやからいくら潤滑性が優秀でも水廻りで使うリール目的としては向いてないと思う」

「って言うか、使っちゃダメじゃんっ」

「いや、用途によっては使えるけど・・・」

「Gamくん、それっ、冗談じゃなくってホントにっ?」

「うん、加水分解の件は水廻りじゃなかったらええねん、例えば遠投競技なんか陸上でやるやん」

「あっ、そっか〜っ、・・・でもっ、対樹脂って?」

「海外事情やけど、レベルワインドのないABU6000番で200メートル以上投げる遠投競技があるねんけど、現行ABUってボールベアリングはスプールの中にあるし、遠心ブレーキじゃなくってマグブレーキに改造するみたいやから樹脂とかゴムは考慮せーへんでいいやんね」

「ふ〜んっ、なるほどね〜っ」

「一発勝負の遠投競技は低粘度のエステル油かな、で、対樹脂と対ゴムはそれぞれ種類によってエステル油との相性があって、問題なさそうなんとマジでNGなんがある、詳しくは『ケミカルアタックの巻』って感じで別に項目を設けて説明するから次行こう」

「じゃぁ、次はシリコンオイルだねっ」

「シリコンちゃうぞ、シリコーンって伸ばすねんぞ」

「ぷぷっ、それってなんか変だよっ」

「高分子のケイ素化合物がシリコーン、セラミックスとか半導体はシリコン、って覚えといて」

「じゃぁ、ガイドはセラミックだからSiCはシリコン・・・、何って言うんだっけ?」

「シリコンカーバイド、炭化ケイ素やね、で、シリコーン油にはジメチルシロキサンとかメチルフェニルシロキサンとかいろんなのがあって、これもウチには意味不明・・・」

「はははっ」

「笑えって・・・、で、例によって特徴なんかを・・・

色々挙げたけど、実のところシリコーン油って潤滑目的以外でもっといろんな用途があるねん」

「たいていは良好だけど、一番最後の境界潤滑性、って気になるねっ」

「一言で言うたら、シリコーン油は鋼対鋼の潤滑には向いてなくって逆に樹脂の潤滑には向いてる」

「じゃぁ、ベアリングにはあんまり良くないっ・・・」

「うん、基本的に油膜強度が弱いみたいやからシリコーン油は軽負荷向きってことで」

「リールは軽負荷、ってGamくんっ言ってたじゃん、だから・・・」

「他の部分にはともかく、スプールベアリングの潤滑目的やったら鉱物油の方が向いてると思うぞ」

「ふ〜んっ」

「ホムセンなんかで『シリコーン滑走材』ってスプレー売ってるねん、あれって障子とか襖の滑りに使えるから、シリコーンって滑りがいい、みたいなイメージがあるねんね、でも、それを負荷で考えると軽負荷に分類されるから・・・」

「じゃぁ、鉄以外の金属には大丈夫なのっ?」

「銅合金なんかの軽負荷にはいける、みたいな話しらしいわ、この辺はシリコーングリースに関わってくるから『グリース編』でコメントする、そしたら次行こ」

「え〜っと、最後はフッ素オイルだねっ」

「うーん、フッ素油なぁ・・・」

「何かあるっ?」

「ニュアンスとしてはシリコーン油の強化型、みたいな感じって思ってくれたらいいわ」

「じゃぁ、ベアリングにも使えるのかなっ?」

「使いたければな」

「じゃぁ、やっぱ何かあるんだっ?」

「・・・『ダイフロイル』」

「あっ、すっごく高い、ってコトっ?」

「えーっと、クロロトリフルオロエチレンとパーフルオロポリエーテルやねんけど、どっちも高いなぁ・・・、化学合成油って鉱物油よりも高いねんけど、その中でもフッ素油は論外、みたいな感じ、のはずやねんけど」

「なんか、言ってるコトって変だよっ、『はず』とか・・・」

「まぁいい、それは次の時間でコメントするわ、そしたら例によって・・・

文字にするとシリコーン油とたいして変わらん」

「潤滑性はまだいいんでしょっ?」

「シリコーン油よりはいい、でも、エステル油並みとは言えんのと、あとは錆にはあまり強くない、って言えばいいんかなぁ・・・」

「オイルなのに錆びちゃう、ってコトっ?」

「『ダイフロイル』のデータシートにも『ダイフロイルをサビが発生しやすい金属と接触する個所で使用する場合、水分のような発錆を促進するものの混入を避けてください。』って書いてるくらいやし、防錆グレードのフッ素油も存在するからな」

「フッ素オイルもあんまりリールには向いてないっ・・・」

「基本的には淡水専用かな?、防錆グレードが入手できれば海水OKと違うかなぁ」

「じゃぁ、Gamくんが仕入れたフッ素オイルって?」

「ウチの『クライトックス』は汎用グレードやからカムルチィやったら使える、でも、ベアリングは消耗品やからどーでもいいかも知れんね、そしたら次は今までのまとめ、ってことで油脂メーカーからパクってきた資料を見てくれる?

基油その1
コレの星印はどう考えたらいいのかなっ?
一番いい、って解釈と違うかな

それからもう一種類・・・

基油その2
今度のはちゃんと優れる、とか注釈してるねっ
メーカーさんによるわ

上が『協同油脂』で『中央油化』って油脂メーカーのパクりやねんけど、元々はグリースの基油の説明やねんな」

「それっ、オイルとグリスってどっちも変わんないのっ?」

「ええと思う、ウチ、めっちゃ適当やから・・・、で、この2つの表で評価に若干の相違はあるけど大体同じやんね」

「うんっ、そうだねっ」

「そしたらミキに質問やけど、今までの話しを踏まえて表を見て考えてほしい、リールのボールベアリングには結局どんな基油がいいと思う?」

「そうだね〜っ、・・・ミキだったら合成炭化水素油かフッ素オイルだけど、海で使うんだったら合成炭化水素油かなっ?」

「低粘度のポリアルファオレフィンが小分けで売ってたらな」

「じゃぁ、売ってないんだっ」

「それは次回のお楽しみやな、で、色々考えてみるとウチは鉱物油でもいいような気がする・・・」

「それはどうしてなのっ?」

「表見てくれたらわかると思うけど、鉱物油でペケついてる項目ってリール目的ではあんまり関係ないやん」

「あっ、耐熱性は確かにそうだねっ、でもっ、酸化安定性って?」

「潤滑油って長期間大気に晒すと酸化して劣化する、これに対する安定性のことやけど、釣行毎に注油したら気にせーへんでいいと思うぞ」

「あとは低温性っ、2つの表で評価が違うねっ」

「そうやなぁ・・・、ワカサギ釣りとか管釣りやら真冬の釣りになると低温性を考慮した選択もありえる、でも、『ISO VG7』のミシン油で対応できそう?なんしかウチは真冬にサカナ釣りせーへんから・・・」

「・・・」

「MAXパフォーマンス系のリールオイルは化学合成油やねんけど、こだわるヒトには受けると思う、クルマのエンジンオイルなんかそうやからな」

「Gamくんもそうじゃないのっ?クルマのエンジンオイルも自分で交換してる、って言ってたじゃんっ」

「いや、ウチは『R34GT-R』にホムセンで売ってたクソ安い鉱物油の『トヨタ純正キャッスルオイル』入れてたくらいやから、そのへんってめっちゃ無頓着やわ」

「・・・」

「化学合成油って言うだけで鉱物油よりもいい、って思うのがこの世の常やねんけど、リールの場合は『潤滑性目的でエステル油!』って選択が向いてない時点でMAXパフォーマンス的には終わってる様な気がするよ」

「それだったら鉱物油でもいい、ってコトなんだっ」

「あとは『序の巻』でも言うたけど入手性、いくらリールに向いた高性能な潤滑油があったとしても小分けで入手できへんかったら意味がない、ドラム缶とか20リッター缶は論外、4リッター缶でも余るし、1リッター缶が限度かなぁ・・・」

「・・・」

「そしたら次の時間は入手性やらそのへんを攻めてみる、ウチのことやから衝撃的な事実が発覚するかも知れんぞ?」

「ぷぷっ、何か勿体付けてるねっ」

「ほな、さいなら!」

「じゃぁね〜っ♪」

(2011/9/4更新)

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