しばらく得意の放置プレイが続いていたファイナルダムン、「仕事との兼ね合いで何もできなかった」ってことにしておくのだが、ようやく余裕ができたので作成途中のバンブーライギョ竿の進捗報告といこう。

前回の予告では「次回はガイド編、自作フレーム」なんてコメントだったけど、「月刊ダムン!」の会話中で、

「ガイドが予想外、いや、予想通りなのかな?『ベリ銅フレームSiCガイド』やねんけど、進んでないわ」

やら、

「ってコトは、今回はやらない、ってコトでいいのっ?」

などとちょっと否定的コメントを残している。そして残念だけど結局はその通りで、1コ作るだけならどうにでもなるのだが、数を作るとなると曲げ加工時の形状のバラツキが無視できないワケで、同じ形状に加工するための治具、なんてのをこしらえてあげればいいのだが、あまりチンタラしても時間がない、もうカムルチィの時期になっちゃってるので涙をのんで断念してしまったのであった・・・

そんなワケで、なんだかつまらなくなってきそうなバンブーライギョ竿だけど、「ベリ銅フレームSiCガイド」の代わりになりそうな、管理人の大好きな「世界初!」的ネタを思いついたので紹介しよう。


六角バンブーのブランクは中空じゃないから重量的にはあまり芳しくないことが想像される。ただ単純に重たくなる、だけであればまだマシなのだが、中空じゃなくて中実だから重量バランスが相当に前よりになる、かなり持ち重りしてしまいそうなのだ。となればバットエンドにバランスウエイトを仕込んで重量バランスを改善するのが、ロッドビルドとしては正常なアプローチだと思う。管理人も以前にステンレスワッシャーを使った自作可変ウエイトバランサーシステムやその鉛バージョンを作成した。当時はウエイト用ワッシャーの収納スペースとしてフジのギンバルをブッタ切ってその中に仕込んだのだが、今回のバンブーライギョ竿はクラシカルスタイルを標榜しているからその手が使えない。となると別の手段で収納スペースを確保しなければならないのであった・・・

さて、そのバランスウエイトに使う金属材料で要求される特性を考えてみると、

  1. 高比重
  2. 加工性
  3. 耐食性
  4. 入手性&お値段

こんな感じかな?まずは高比重、これは簡単だ。バットエンドの限られたスペースの中に収納する、すなわち寸法に制約があるのだから同一形状でできるだけ重くできる材質、すなわちできるだけ高比重な材質を選択するのがベストだと思う。

お次は加工性。いくら高比重でも硬くて加工不可能、となると出来合いの形状をそのまま採用することになり、バランサー用に都合のいい形状で材料が市販されていればいいのだが、そんな便利なのはなかなか難しく、やはり、何らかの追加工が必要になると思う。

3番目の耐食性はもういいよね?前々から同じことを言ってるだけだし。

で、最後の入手性&お値段。これも簡単。いくら高比重かつ加工性に優れて、更に優秀な耐食性を誇るからと言ってもさすがに純金は不採用だろう。もちろんスーパーリッチなヒトはこの通りではないだろうけど。他の貴金属系もだいたい似たような特性だけどもちろん却下に決まっている。ただ、この項目を無視した、純粋な技術レベルのお話しだと純金ってバランサー材質としてはめっちゃいい感じなんだけどね。

それでは例によって高比重の金属材料をピックアップしてみるね。

 
タングステン
白金
ビスマス
プルトニウム
ウラン
オスミウム
イリジウム
レニウム
比重
11.4
19.3
19.3
21.5
9.0
10.5
9.8
7.3
7.9
19.8
19.1
22.6
22.6
21.0
今回は機械屋さんの資料じゃなくって周期表から拾っているので、全てのデータで純金属だ
また、元ネタが違うから 以前のデータとは合わない点があると思うけど、しゃーないなぁ・・・

色々と思いつくまま挙げてみたけど、最後の方は危険な放射性元素や耳にしたこともないような貴金属やら冗談みたいなのばかりだからどうでもいいとして、常識的にはやはり鉛かな?いくら高比重なタングステンシンカーが普及しつつある、と言っても2番と4番は鉛の方が優秀、サカナ釣りに使う、という条件であればまだしばらくは鉛が主流だと思う。市販のタングステンシンカーなんて加工できないし、タングステンの粉を入手してそれを任意の形状に固めてしまう、ってのも難易度が高いだろう。それじゃぁ、素直に鉛使うのん?でもなんか、それって面白くないよね。

うーん、といつものようにしばらく悩む管理人。だけど、やはり悪魔の閃きがここでもまた発揮されるのであった。果たしてそれは・・・

銅タン
一応、外径は14mmあるねんけど

色が赤いから得意の銅合金?でも、銅って鉛よりも軽いやんけ??と思われるかも知れない。実はこれ、「銅タングステン合金」、略して「銅タン」なんてちょっとどころか相当に特殊な材料なのだ。この銅タンのセールスポイントは、

加工できるタングステン合金!

黄色の太字だから、これってすごく重要。さっきも述べたけど、釣具屋さんで売ってるタングステンシンカーを任意の形状にするのって、はっきり言ってムリだよね。だけど、この銅タンは工作機械だけじゃなくヤスリなんかでも加工が可能なのだ。ちなみに例の如くデータを紹介すると、

 
タングステン
銅タングステン合金(30%Cu-70%W)
銀タングステン合金(35%Ag-65%W)
比重
11.4
19.3
13.9
14.8

偉そうなこと言うてる割に軽いやん?まぁ、そうかもしれないね。この比重に関しては加工性の代償ってことにしておこう。銅タンに関しては、銅とタングステンの比率により種類があるのだが、一般的な銅タンだと、この30%銅-70%タングステンになるみたい。もちろん銅タンよりも高比重な銀タンの方がいいに決まってるのだけど、それは・・・

「工場長、あのな、銅タンと銀タンってどっちが削りやすいん?」

「そうやなぁ、ワシもあんまり経験ないねんけど、銅タンの方が削りやすかったぞ」

「もちろん銀タンって高いやんなぁ?」

「そら、銅タンよりも銀タンの方が高いに決まってるわ、それでな、おまえ、そんな材料何に使うねん、だいたいそんなもんは放電加工の電極に使うねんぞ」

「竿に使うねん、『世界初!銅タングステン合金製可変ウエイトバランサーシステム!!』やぞ」

「また、アホみたいなことして・・・」

「しゃーないやんけ、あんたの弟子やねんから!」

「・・・」

神業の持ち主の言うことはよく聞いておこう、それでなくてもオモチャ旋盤で加工するのだから。先に述べた特性を考慮してみるけど、

 
タングステン
銅タングステン合金(30%Cu-70%W)
銀タングステン合金(35%Ag-65%W)
比重
○+
加工性
三重丸
×
○−
耐食性
入手性&お値段
三重丸
×
△−
この場合のタングステンは加工材料としてのタングステンであって、タングステンシンカーじゃないからね
耐食性はデータがないから不明だけどそんなに悪くないと思う、少なくとも鉄やジュラルミンよりマシかな?

いつもの通り、管理人の独断&偏見評価だから正しくないことは先に述べておく。それはそうとして、最重要課題である比重がちょっと見劣りするけど、銅タンより高比重な材料を探す方が難しい。少なくとも管理人は高価な貴金属やら危険な放射性元素しか思い浮かばない。なので、今回は銅タングステン合金を採用することにした。比重差と入手性を考慮すれば鉛でもいいと思うけど、やっぱ「アホテク」なんてのをテーマにしちゃってるから、フツーのヒトやメーカーさんだと思い浮かばない、採用しない材料の方が面白そうだもんね。

ウエイトバランサーの材質は決定したけど、それをどのようにして六角バンブーロッドに仕込むのか?それもクラシカルスタイルの雰囲気を壊さずに、である。ちょっと難しそう?で、その結論とは、

グリップから下をカーボンパイプにして、バットエンドに円筒形の銅タン製ウエイトを仕込むのだ!

元々の竿自体がウッドグリップだったけど、今の竿みたいにバットエンドまで貫通してるんじゃなくって、途中までしか突っ込んでいないのでこのまま組んでしまうと長さが不足してしまう。なので、当初からカーボンパイプで延長する都合だった。グリップだからカーボンパイプは見えなくなるので雰囲気も壊さないし、ウエイトを仕込むのも簡単で、パイプの中に仕込めばいいから。あとは使ってる間に動いたりしないで簡単に着脱できるような固定方法を考えればいい。それでは実作業の紹介だね。

まずはカーボンパイプ、

カーボンパイプ
寸法自体は外径17mmの内径14mm、長さが70cmのパイプだ。これは釣具屋さんに売ってるぞ

釣具屋さんで売ってるカーボンパイプ、といっても色々あるようで、今回はちょっと厚みのあるパイプを選択している。もちろんライギョ竿だから、というのが大きい。計算上は厚み1.5mmになる。このパイプの中に銅タンを仕込むのだ。そしたら銅タンはどうするのか、それは・・・

旋盤で穴あけ 旋盤で突っ切り
この辺、いつも通りだから・・・

えーっと、旋盤で真ん中に穴をあけてから突っ切ってしまう。可変ウエイトバランサー、と言うからには無論のこと、調整できるようにしないとダメ。とりあえずバランスウエイト1コの重量が10グラムになるように計算したつもりだけど・・・

はかりその1 はかりその2
計算ミス?

なぜか0.2グラムほど誤差が発生しているようだ??これはあとで説明するよ。とにかく6コ作っておよそ60グラムのバランスウエイトが完成したね。

次はこのバランスウエイトをパイプに固定する手段なのだが、こんなのを採用してみた。

ウェルナット
東急ハンズでお買い上げ
サイズは5mm用がちょうどよかった

ウェルナットと呼ばれるゴム製のナットで、ゴムの中に黄銅のメネジがインサートされている。このウェルナット、どのように使うかと言うと・・・

ウェルナットその2 ウェルナットその3
1コだけヤスリで削ってるウエイトがあるけど気にするな?

左が仮止めで右が本固定状態だけど、ウェルナットに銅タンウエイトを挟んで長い目のネジで締め付けると、右の画像のようにゴムの部分が圧縮されて外径が大きくなるのだ。


ナット部が先端だけなのに注目

ウェルナットにインサートされているネジは先端部だけであり、下の方は空洞になってる。なのでネジを締め付けると空洞部が上下方向に圧縮されて直径が大きくなる。また、本固定とはいうもののネジはドライバーで締め付けたのではなく、手締めだけなので手軽に調整することも可能になるのだ。また、単純にナットで固定した場合はパイプとのすきまがあるので中でウエイトが遊んでしまうけど、ウェルナットで固定した場合はゴムが膨らんですきまがなくなるのでガタつきを最小限に押さえることができるし、ゴムのおかげでナットの弛み止め効果も期待できるだろう。あと、バランスウエイトで補足すると、

こんな感じかな。そして実際にパイプに組んでみようとしたのだが、

銅タンの直径が大きすぎてパイプに入らん!

銅タンは直径14mmって指定で手配したハズなのだが、なぜか?大きいようだ。恐らく加工代を見て大きめの寸法で供給されているのだろうね。重さの誤差もこの寸法差によるものだ。管理人は外径14mmの内径5mmで計算していたから。

寸法その1 寸法その2
寸法差0.1mm以上・・・

ちゅーか、そんなもん、削る前に寸法測ったらそれで済む、フツーはそうするやんけ!

ごもっともで・・・

それはどうでもいいから手直しする必要があるのだが、短く切ってしまった銅タンの直径を小さくするのは難しい。短いから旋盤ではムリだし、ちょっとだけやってみたけどヤスリで削るのも時間がかかって仕方がない。なので、パイプ内径を拡大するのだ。

アジャスタブルリーマ
これも旋盤加工ね

内径を任意の寸法に加工する手段は色々とあるのだが、今回は「アジャスタブルリーマ」を使ってみた。通常のリーマと違ってある程度の寸法調整が可能であり、0.1mm単位でわざわざリーマを買いそろえる必要がなく、ホビーレベルだと重宝するぞ。まぁ、本当は「自作摺り合わせ加工済みバットジョイント・オフセットグリップ作成大作戦」なんて理解不能な企画用に仕入れていた。余談だけどこの「自作摺り合わせ加工済みバットジョイント・オフセットグリップ作成大作戦」、ウィードベッドモンスターシリーズであれば任意の内径のカーボンパイプが入手できれば可能だぞ。アルガマスターはテーパー穴にしないとダメだけど、ウィードベッドモンスターはテーパー穴じゃなくってストレートだから。

それじゃぁ気を取り直して、ウエイトを突っ込んでみよう。

突っ込んだったぞ
すきまはゴムワッシャーだから気にしないで

ちゃんと寸法合わせしたから入って当たり前。もちろんステンレスのワッシャーがあるからこれ以上は奥に入り込まないようになっているぞ。ちなみに加工後のパイプ内径は14.5mmとちょっと大き目、もう少し小さくしてもいいだろう。

ウエイトをパイプに仕込むのが完了したら、次は、剥き出しにならないようにキャップか何かで保護する必要がある。目隠しでもいい。このままだと見た目格好悪いだろうし、奥には入り込まないけど抜け落ちてくることも考えられる。そもそもクラシカルスタイルからは大きく逸脱しちゃうし。で、準備するモノとしては・・・

DPS-17
なぜかフジのパイプシート

リールシートはLakelandの黄銅製を採用したにも関わらず、フジの標準パイプシートDPS-17が登場している。下の丸いキャップの方だけど、これはマッシュルームバットキャップで、クラシカルスタイルと言うことで今回はコイツがバットエンドに装着される。バットキャップはわかるけど、じゃぁ、なんでパイプシート??まぁ、よく見てもらおうか・・・

 

切断その1
固定側フードを切っちゃう

破損・・・
前のネジ部だけが必要なので突っ切ったけど壊れちゃった・・・
まぁ、要らない部分だからどうでもいいけど

部品
下はカーボンパイプだけど、上の左がパイプシートのネジ部
右はフードを外してナットだけにした

これでどうにか判断つきそう?パイプシートのネジ部を切断、そのネジ部をカーボンパイプに接着する。一方のナットだけど、これはバットキャップの中に接着する。そうすればバットキャップをパイプにネジ込めるようになるのだ。この方式についての考察として、

  1. ネジ式だから簡単に着脱できる
  2. きつくネジ込めばそんなに弛むこともないと予想している
  3. 外観はただのマッシュルームバットキャップだからクラシカルスタイルそのものだ
  4. バットキャップで塞ぐのでウエイトバランサーが脱落するのを防止できる

うん、なかなかいい感じだと思うぞ。2番はちょっといい加減だけどね。それでは接着後の画像の紹介、と行きたいところなのだが、

うん、相変わらず撮影忘れ!

何回同じことしてるねん・・・、なので、次回のグリップ編の画像でお茶を濁すことにする・・・

バランサー部
グリップはコルクにしたよ

これでわかるよね?バットキャップ内側とグリップパイプの端にネジが存在するのに要注目だね。注意点として、

そんな大したことじゃないとは思うけど・・・

それでは久しぶりのバンブーカムルチィも終わりにする。クラシカルスタイルのままで可変バランサーを採用、なんてちょっと難しそうな注文だったけど、これなら全然OKだね。例の如く「世界初!銅タングステン合金製可変ウエイトバランサーシステム!」だし(笑)

それでは次回はグリップ編、さて、完成はいつ頃になるんかなぁ・・・(2008/5/7更新)

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